使い回しシリーズ1:にっぽんふかし話「モモ太郎」

 むかしむかしあるところに、お爺さんとお婆さんが住んでおりました。
 さてこのおじいさん、基本的にはいいひとなのですが女癖が悪く、ある日酔った勢いで近所のモモコさんをはらませてしまいました。お爺さんは老いてなお盛んだったのです。
「これはまずい、ばあさんにころされてしまう」
 そこでお爺さんは一計を案じ、モモコさんに慰謝料を払って子供を引き取りました。そして数日後……。
「ほらおじいさん、せんたくをしていたらダチョウの肉が!」
 こうしてお爺さんはモモ肉から赤ん坊を取り出し、まんまと『モモ太郎』と名付けて育てることに成功したのです。
 しかしこのモモ太郎、ダチョウのモモから生まれたというコンプレックスを持っていたために、とても頭はよかったのですがかなり歪んだ子供になっていました。
「ぼくがいっぱんせけんにみとめられるには、しゅっせいをおおいかくすほどのこうせきをたてなくちゃいけないんだ」
 いわゆる現代社会の犠牲者というやつです。モモ太郎が日々の爛れた生活の中、このようなひとつの結論に至ったのは当然と言えるでしょう。
 そして十八歳の春、モモ太郎は鬼退治に出かけます。しかしたかだか十八歳のモラトリアム小僧が鬼ヶ島に出向いてどうなるというわけでもありません。モモ太郎はまず仲間集めからはじめることにしました。
「さてどうしよう、むらのやつらはつかえないし……」
モモ太郎は他の子の親御さんたちから『あんなモモ肉から生まれた子となんか遊んじゃいけませんよ』と迫害されていたため、頼りになるような友達がいなかったのです。せちがらい世の中ですね。
「よし、あいつらをつかうか」
 禍々しいな笑みを浮かべたモモ太郎はイヌ、サル、キジの三匹に目を付けました。毎日を無目的に過ごし現代社会を満喫する彼らを拉致監禁し、徹底した『教育』を施すことで鋼鉄の如き忠義心を持つ部下に育て上げたのです。
「ふふふ、これでかんせいだ……」
 とてもこの程度の戦力でどうにかなるとは思えませんでしたが、モモ太郎はニヤニヤと笑っていました。どうやらこの三匹だけで鬼退治を遂行する算段があるようです。


 さて、本来ならばここでモモ太郎が鮮やかに鬼退治をする場面を描かなければいけないのですが、ちょっとした事情により掲載することができなくなってしまいました。読者の皆様には申し訳ありませんが、以下のキーワードから内容をご想像ください。
「筋弛緩系ガス・寝込み・阿鼻叫喚・拷問」


 そんなこんなでお宝を手に入れたモモ太郎一行は意気揚々と村へ帰ってきました。なんせモモ太郎たちは鬼を退治した英雄です。いつもモモ太郎を迫害していた村人の誰もが手のひらを返してモモ太郎を褒めちぎります。モモ太郎は自分のやってきたことに言いようのない虚しさを感じずにはいられませんでした。
 しかし、お爺さんとお婆さんは大喜びでモモ太郎を迎えます。モモ太郎はこんな幸せも悪くない、と自分を納得させるのでした。
 その日の夜、晩酌としゃれこんでいるお爺さんにお婆さんが話しかけてきました。
「ほんにモモたろうはりっぱになったねえ」
「そうじゃのう」
 なにしろあのような境遇のモモ太郎です。お爺さんの感激も並大抵のものではありません。そんなお爺さんをお婆さんは黙って眺めています。
「モモたろうもしあわせになって、ばんばんざいじゃよ」
 お爺さんが思い出に浸っているとお婆さんは微笑み、ゆっくりと小さく、しかしはっきりとした声で言いました。

「モモコさんに感謝しなきゃね」

 モモ太郎たちはいつまでもいつまでも幸せに暮らしましたとさ。

めでたしめでたし。

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