5年ほど前の使い回しシリーズ2:ああっ女神さまの守護月天がとまらなひなまほ!(仮)

 今日も朝が始まる。ご飯に味噌汁、卵焼き。存在を自己主張するかのように溢れる湯気を、胸いっぱいに吸い込む。うん、いい匂いだ。

「いただきます」

 食前の礼は忘れずに。漆塗りの箸を構え、ご飯を一口頬張る。炊きたてにしか生まれない弾力を味わいつつ、そのまま味噌汁をひとすすり。絶妙の塩加減が米の糖度とぶつかり合い、舌先の味覚神経を乱打する。もちろん、卵焼きもしっかりとダシを効かせ、ふうわりと仕上げた逸品である。

 断言しよう。最高にうまい。

「うまいよ、確かに認める。けど」

 そう、確かにうまい。陳腐な物言いをするならば、「料理人も裸足で逃げ出すほど」だ。
 しかし、僕はその手をとめ、箸を置く。深く、とても深く、ゆっくりと息を吐き、再び大きく吸ってからその言葉を発する。

「なんで、全部プロテイン風味なんだ……?」

 目の前に、朝日を身体に浴びつつ爽やかな笑顔でポージングを決めるマッチョな男がいた。

「どうしたんじゃぁ、刑一どん?ふうぅ、今日も上腕二頭筋から三角筋をかけて大胸筋そして外腹斜筋に腹直筋へと続くわしのラインは最高じゃあぁ。ポイントは小胸筋と内肋角筋じゃあぁ!」

 この男の名は鈴伊達男(ベルダンディー)。僕、盛佐藤刑一にまあいろいろあって居候している頑強な筋肉男だ。

「いや、小胸筋と内肋角筋って外からは見えないはずだが……まあいい。今はお前の相手をしている暇はないんだ」
「……ほほう、胸鎖乳突筋がぴくぴくと痙攣しておる。刑一どん、何か悩み事があるな?話すがよいぞぉお!」

 ……むやみに鋭いなコイツ。仕方ない、駄目元で話してみるか。

「話せば長くなるが、主人公らしくライバルの挑発に乗ってボクシング勝負をすることになったんだ。例によって勝ち目がないから悩んでいたのさ」
「思いっきり短いのう。
 よし!わしがなんとかしてやろう!この尺側手根屈筋の名にかけて!では、行ってくるぞぉぉぉぉ!」

 言うが早いか壁を突き破り、外へ飛び出す鈴伊達男。……後かたづけはもちろん僕の仕事である。


 夕方。
 汗だくの(まあ、いつも汗だくなのだが)鈴伊達男は帰ってくるなりベッドにもぐり、いびきを立てて眠りこけている。
「……ライバルが謎の怪我で入院!?」

 僕は素っ頓狂な声を上げる。電話口の友人も、何がなんだかわからないと言った様子だ。

「いや、俺にもよくわからないんだが、なんでも、30キロの鉄アレイで殴られたらしいぜ」

 鉄アレイ?……まさか!?

「ううん、大臀筋が、後背筋が神々しいのぉ……グゴゴ……」

「お、おいどうした刑一?もしもし?もしもし?」

 僕は全てを理解し、友人の声が漏れる受話器を片手にぼんやりと「彼」を見下ろす。

 断言しよう。
 最高に……やばい。

遠い目をしながら目次へ。